【データから検証】「ゴールデンクロス」は、本当に買いのシグナルなのか?

ゴールデンクロスは株価上昇のサイン?

ゴールデンクロスとは?

ゴールデンクロスは、株価上昇のサインとして非常に有名です。Twitter上でも、インフルエンサーや投資セミナー講師の方が、ゴールデンクロスだから買いのシグナルだと投稿するのを毎日のように見かけます。

この記事では、テクニカル分析で買いのシグナルとされる「ゴールデンクロス」は、本当に買いのシグナルなのか?を検証しています。ある特定の銘柄や状況をピックアップして、ゴールデンクロス(もしくは他の種類のシグナル)だから買い、と言っている方を見かけたことがある場合、ぜひ読んでいただきたい内容です。

シグナルの計算方法

「ゴールデンクロス」とは、テクニカル分析のシグナルの1つで、移動平均線を利用したものです。具体的には、25日移動平均線を5日移動平均線が上抜いたものという定義が一般的です。
テクニカル分析や、移動平均線などの基本的な説明は、ここでは省略します。

検証内容

2017年の全上場企業の株価データを使用し、ゴールデンクロスが発生した後のパフォーマンスを分析しました。株価が低い銘柄(200円未満)や、2017年に上場した銘柄などは分析対象から除外し、残った2,278銘柄を対象としています。対象の銘柄数が多いので、本記事に全て掲載しきれませんが、なんらかの形で公開したいと考えています。

検証結果

それぞれの銘柄について、ゴールデンクロスが発生した日の終値で購入し、5営業日後・10営業日後の終値で売却した時のリターン(利益)をシミュレーションします。
一つ注意したいのが、ゴールデンクロスというシグナルは、次の日に株価が上がる銘柄を予測するものではないということです。理由は、今回の検証で使用する指標は5日移動平均と25日移動平均に基づくためです。過去25日間の値動きと、直近5日間の値動きの差を捉えて売買するシグナルのため、短期の株価予測には不向きです。ゴールデンクロスで売買する場合は、最低1週間程度の期間保有することが前提となります。

シミュレーション結果

下の表に、全体の傾向をまとめました。

項目
発生回数 14,781回
1銘柄あたりの平均回数(年間) 6回
勝率(5営業日) 54.1%
勝率(10営業日) 56.3%
1回あたりの平均利益(5営業日) +0.8%
1回あたりの平均利益(10営業日) +1.4%

結論としては、ゴールデンクロスは期待値がプラスなので有効なシグナルといえるでしょう。一方で、発生回数が多く1回あたりの利益の期待値も小さいため、理論通り売買することが非常に難しいといえます。

シグナル発生後、5営業日保有する場合と10営業日保有する場合を比較すると、10営業日保有する方が勝率・期待利益共に高いという結果となりました。

重要なところは、勝てるシグナルといっても、勝率は50%台ということです。

勝率50%台だと、売買を続けている時は、勝っている感覚はあまりないでしょう。シグナルを使った売買は、統計的に期待値がプラスの手法で十分な回数の売買を繰り返すことが前提となるため、ある1つの銘柄がゴールデンクロスのシグナルを出しているから買い、という性質のものではありません。銘柄の名前や相場環境に引きずられず、年間約15,000回シグナル通りに機械的に売買することで、期待値通りの利益が見込めるという手法です。

過去に見聞きした投資セミナーやtwitterで、ある特定の銘柄・状況をピックアップして、ゴールデンクロス(もしくは他の種類のシグナル)だから買い、とは言ってはいなかったでしょうか?ここまで読んでいただいた方は、他に明確な根拠がなくゴールデンクロスしか見ていない場合、その時の勝率は概ね56%(10営業日保有する場合)とわかるでしょう。特定の銘柄、特定のタイミングだけピックアップして、その時に売買すれば勝てるように喧伝するのは、非常にナンセンスで間違っています。

シグナルを元に売買する難しさ

発生回数としては、全期間で14,781回です。1日あたり、30~100銘柄程度発生する計算になります。保有期間を10日間とすると、全てのシグナルで売買した場合、常時平均600~700銘柄ほど保有することになります。

これは色々な側面で難しいと言えます。まず時間的なコストです。毎日数十銘柄、最大100銘柄を売買し続けるのは、非常に手間がかかります。次に、資金面と精神面です。常時600銘柄を保有するのは、大量の資金が必要です。加えて、勝率は50%台なので理論上その中の約半数は損失を出してしまうため、常に精神的に苦しい状況が続くと言えます。

シグナルをどう使えば資金が増やせるか?

ゴールデンクロスを使って資金を増やす方法は2パターンあります。

  1. システムトレードによりシグナル通りに機械的に売買を繰り返す
  2. 適切なスクリーニングにより人手で売買できる範囲で、勝率・期待値を高める

1の手法は、資金が大量にある企業や団体、すなわち大口と言われるプロの投資集団が実施している手法に近いものです。1の手法を用いる場合、もう少し統計的に高度なシグナルの作り方をすることが一般的で、資金量的にも個人では難しい場合が多いです。本サイトの目的にも合わないため、1の手法の解説は省略します。もし1の手法に興味がある方は、個別に問い合わせください。

続いての記事では、2の手法について検証します。シグナル通りに売買する場合、勝率100%の銘柄もあれば、勝率0%の銘柄もあります。勝率の高い条件を分析し・抽出することを「スクリーニング」と言います。適切なスクリーニングをすることで、無駄な売買を減らし、勝率・期待値を高めることができます。

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